36 御油 (Goyu)
前の宿へ
一覧へ
次の宿へ

祝荷ノ飾り

傍示杭の立つ宿場はずれへ来かかった人足たちが、音頭で担ぐ祝いの大荷。荷の上で傘飾りの吊り物が、冷やっとする秋口の夕風にゆらぐ。人足の後ろから一人、コモをまとった男が来る。街道や近在を毎日もらい歩き、一夏をのんきに野宿で過ごした浮浪が、冷気にブルッときて今更に異郷の夕空を見上げる。帰心がしのび込み、江戸の方をさして歩き出したところ。勝海舟の父小吉も14歳で出奔し、街道乞食に。当時の青春放浪。


表紙に戻る