55 京 (Kyo)
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三条大橋

ここで広重の筆は、これまで54景に描いてきた旅人や人足の姿を引っ込める。三条大橋の上をゆったり往来するのは都びと。加茂の流れの対岸には、794年の遷都から千年余を経た都の家並みが、山を背にシーンと広がる。広重が構図全体を左右対称にして、物音を静めてある。だから、黒木や梯子を頭上に橋を来る大原女の、後ろ腰に当てた手つきや、腰に紅い御所帯や、蹴出しの裾の白さが、どきりと目につく。みやびである。


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